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zoom RSS 人間にとっての地獄とは…

<<   作成日時 : 2017/02/27 03:09   >>

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☆学習院+戯れの会#3「HUIS CLOS-出口なし-」チラシ

学習院大学・南1号館で観劇。
初めて行ったけど、目白駅から徒歩30秒!
東大理学部以外でこんなに駅近な大学、初めて。

作/ジャン・ポール・サルトル、演出/多和田真太良

大変に見応えのあるセリフ劇、濃密な1時間50分。
哲学者サルトルが戯曲を書いていたことを知らなかった無知な演劇人の私でも強烈に引き込まれた。
ユイ=クロ(HUIS CLOS)とは「傍聴禁止」という裁判用語だが、それを地獄の一部屋に置き換え、ボーイに連れてこられた3人(男1女2)の死者が凄絶な舌戦(時に肉体を用い)を繰り広げる。
キャストはこの4人だけ。
ガルサン役の窪田壮史、彼は2016年4月のまじんプロジェクト第3回公演「くれない坂の猫」で大事な役・チュンソンを好演してくれた俳優だ。
イネス役の吉田直子さん、エステル役の平澤萌花さん、3人の死者を演じた俳優はどなたも素晴らしい俳優さんたちで、迫力、説得力、存在感が抜群だった。

タイトルは「出口なし」だが、舞台上には一応出入り口がある。
3人は外廊下からボーイに一人ずつ連れてこられるが、外からはかんぬきがかけられているらしく、部屋の中からは出られないのだ。
ボーイを呼ぶためのブザーもあるが、肝心な時に壊れて鳴らない。
一人一脚のソファがあてがわれ、部屋も決して狭いわけではない。
ただ、自分の意思では出られない。
そこに見知らぬ男女が3人、閉じ込めらる。

同時期に死んだ互いに関わり合いのない世界で生きてきた3人の死者たちは、徐々に語り始める。
次第にそれぞれを探り合い、なじり合い、2対1になり、その組み合わせを何度となく変えながら、理解し合うことは決してない。
死んだことに恬淡とするイネスとは逆に、ガルサンとエステルは生前の自分と自分と関わった人間たちへの執着が強い。
部屋には窓がないが、皆、生前気になっていた環境の現在の様子が壁に現れるようで、そこに見える生者や家を見ては流石のイネスも身悶える。
その懊悩がさらに死者たちの諍いに火を注ぐ。
どうにもできないこと、取り返すことができないもの、死んだことに尊厳ははらわれず、一緒に居なければならない他者への不満は募り、眠りのない世界を前にして、心の平安は訪れず、延々と争い続ける。
針のむしろも閻魔の舌抜きも鞭打ちもないけれど、どこまでも心が疲弊し絶望する3人。

チラシに「地獄っていうのは、他人のことじゃないか。」というセリフの一部が載っている。
3人というのがミソなのだろう。
二人が結託しても、残ったもう一人が必ず見ている。
『他者のまなざしが自由を奪う』、という文章がパンフレットに載っていた。
翻訳とドラマトゥルクを担当した西樹理さんがパンフによせた「サルトルのまなざし」にあった言葉だ。
そんなことは特に意識して生きてこなかったが、確かに他人の目は自分の行動に影響を与えている。

そういえば、敬愛する作家・奥泉光さんが書いた戯曲「鏡の向こうのシェイクスピア・シリーズ」の根幹にあるのも人間の絶望だったなと思い出す。
このシリーズは、どれも地獄に落ちたシェイクスピアの登場人物たちの物語なのだ。
奥泉さんはサルトルのこの戯曲に影響を受けて書かれたのかもしれない。
確かめたわけじゃないけれど。

ちなみにキリスト教の世界には、元来「地獄」は無い。
ダンテの「神曲」以降、広まった思想であり、個人的には人間を更生させるための知恵であろうかと思う。
サルトルはだから、この作品の中で神については一切触れていない。
どこまでも人間の物語だ。
最後の方で、一度だけガルサンが押した扉が開くシーンがあった。
だが、誰も出て行かなかった。
いがみ合いしかない部屋なのに、たった一人で放逐される方がもっと恐ろしいのだろうか。

不毛なこと、絶望すること、それらが際限なく繰り返される、という印象を残して舞台は終わる。

このおぞましい負の感情しかない世界が面白くて、ものすごく集中させられた。
一字一句逃すと理解が追いつかないのではないかと必死で考えながら観たのだが、困った事にそういう集中力を使う観劇の最中では決まってお腹が鳴る。
単純に、いつもより頭を使ったからお腹が空いたのだが、周りの人にはっきり聞こえる音量でギュルルルル〜と何度も腹が鳴るのでかなわない。
私の身体は正直すぎて恥ずかしい。

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コメント(1件)

内 容 ニックネーム/日時
私もすっご〜〜い遥か昔(学生時代だったかな?)に、この作品観て、かなりのインパクトを受けました。
その後、しばらくいくつかサルトルの作品読んだりして…
そう言えば、やってみたい作品だったな、なんて思い出しました。
確かに奥泉さんの「鏡の向こうのシェイクスピア・シリーズ」の世界観って、似てますね。
大音量のお腹の虫… 鳴っちゃ困る時に鳴るのも御同様。(笑)
じぷしぃ
2017/03/04 15:20

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