新訳で再読(…と言えるかどうかだが(;´Д`))

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「ねじの回転」ヘンリー・ジェイムズ/著、小川高義/訳(新潮文庫)表紙

この小説に初めて出会ったのは、40年近く前の大学での授業でだった。
授業は「英米文学論」だったか、「英文学」だったかよく覚えていない上に、しょっちゅう授業をサボっていたので、授業内容においては更に怪しい。
家庭教師と子供の物語なのに、なにやら婉曲的な性的表現があったこと、どうしても結末をはっきり思い出せないことなど、本当に断片的なことしか思い出せない。
おまけに授業では原文しか扱わなかったので、自分の英語力からして当然ほとんどついていけなかった。
全く大した学生さんだ
ところがつい先だって、書店で新訳が出ているのを見つけたら、急にどんな物語だったのか、全文をきちんと読んで確認したくなってしまった。
で、あんなに嫌々出席していた授業、しかもサボりがちだったくせに、日本語訳ならちゃんと読めるだろうと出来心で買ってしまった。

一言で感想を書くなら、非常に厄介な小説であるということ。
日本語で読んでも、どう解釈して良いのか判然としない作品だということがわかった。
日本語でも厄介な、こんな偏差値の高い作品をどうしてあの先生(当時の大学の)は教材に選んだのだろう。
端から学生に理解させる気が無かったんじゃないか、自分の研究材料持ち込んだだけじゃないか、なんてうがった見方だろうか。

まず、これはクリスマスイブに古い屋敷で怪談話を聞くという余興の席で披露された物語であるということ。
成り行きから参加者の一人ダグラスが20年前に亡くなった女性が書いた手記を読むことになった。
ここまでが前置き。

続く第1章からは、ダグラスが手記を書き写した手稿を読むので、イギリス郊外の貴族屋敷に赴任した女性家庭教師が主人公になり、彼女の一人称で物語が進む。

彼女が受け持った二人は眉目秀麗で聡明な兄妹、10歳のマイルズと8歳のフローラ。
赴任早々、屋敷に出没する幽霊を見てしまうが、どうやらそれは前任の美人家庭教師ジェセルと下男クイントの霊かと推測された。
屋敷の大人の中では彼女にしか見えないが、二人の兄妹には見えているらしい。
二人は怖がるどころか、彼女に悟られないようにこっそり霊達と会っているようだ。
幽霊の影響下から二人を救うべく彼女は手を尽くそうとするが、頼みの家政婦グロースさんに幽霊は見えず、利発で美しい子供たちに翻弄されて事は容易に進まない。
ある夜、グロースさんにフローラを預けて屋敷の主人(兄妹のおじ)が住むロンドンに旅立たせた後、残ったマイルズと背後の窓に見えるクイントの霊ををいよいよ追い詰めたと思った刹那、マイルズは彼女の腕の中で絶命してしまう。

エピローグはない。

なんという唐突な終わり方
呆気に取られてしまった。
怪談話の後の参加者の会話もなく、ショッキングな手稿の結末のままで終わるなんて。

この小説には解釈が様々あるようだ。
霊の存在は自分の立場を際立たせるための家庭教師の自作自演である、
雇用主の紳士への憧れを、美しいマイルズを代償にすることで自分を慰ている(訳者はあとがきで『虐待』と表現している)、
など、つまり素直に読んではイケナイ。

これが書かれた時代は性的な表現を抑圧されていたらしい。
だからかと思うが、手記には本当にそれとなくフローラの一人遊びの描写に性的表現と取れる部分がある。
「フローラは小さな木片を拾っていて、その真ん中に穴があいていたものですから、別の木切れをさがして突っ込んだら舟にマストが立ったようになると思いついたようです。私が見ている前で、この第二の木切れをぎゅうぎゅう押し込もうとしていました。」
この部分だけは私、大学の授業で取り上げられたことを今でもはっきり覚えている。
先生(教授だったか講師だったかも定かではない)が、はっきり性的な描写だと捉えることが出来ると言ったので、
「へえぇ!そんなのを教材にするんだぁ」と感じたことも。

本編の多くを占めるグロースさんとのまどろっこしいやり取りの中でも、クイントとジェセルが密通していたことを含めて、随所に性的な何事かが子供達との間にもあったのではないかと推測させられる部分が多い。
下男の霊はマイルズを、前任家庭教師の霊はフローラを支配している様子、そこからは更に淫猥な想像も喚起された。

関連してネットで面白いページを見つけたので、こちらも良かったら読んでみて。
中々に説得力のあるR指定の推測で、エピローグが無かった理由にも納得してしまった。
http://scherzo111.blog122.fc2.com/blog-entry-371.html

マイルズが本当に絶命したとしても、上記のネットでのR指定推測が真実だとしても、
私にはその後、一体彼女がどうしたのかが気にかかって仕方がない。

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