こんな本を読んだ・小川 糸「食堂かたつむり」

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☆小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ文庫)表紙

自粛期間中に読書バトンリレーが流行ってたけど、
その流れでダンサーのMika Kumon先生がこの本を上げておられたので、読んでみようと思った。
小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ文庫)。

不器用でピュアな女性の物語。
不器用すぎて、私のようなガサツな人間からするとかなりじれったくて時にイライラする。
ある日、アルバイトからインド人ボーイフレンドとの愛の巣に戻ったら、そこはもぬけの殻だった。
家財道具の一切と、押し入れに貯めていたお金まで無くなっていた。
傷心のあまり口も聞けなくなって、着の身着のまま、祖母から譲り受けたヌカ床だけを抱えて東北の実家に戻る主人公‥
いやいやいやいや、ちょっと待って❗
男の行方、探そうよ❗
家財道具は諦めても、貯金は取り返そうと行動しなよ❗警察行けよ❗
と、冒頭から彼女の行動に否定的な私。
実家に落ち着いてからも、しばらくは事あるごとにインド人ボーイフレンドに思いを馳せる主人公・倫子に納得がいかない。
金を持ち逃げされた日にゃ、私なら一生許さないけどね。
しかも、そのお金は彼と将来料理店を開業するためコツコツ貯めた開店資金だったんだから。
憎悪するでしょ、フツー。
そう、この倫子さん、普通の女の感覚ではない。
心根が優しくて美し過ぎるのだ。

さて実家に無一文で舞い戻った倫子だが、どうにも母親(おかん)との折り合いが悪い。
おかんの生き方に否定的な倫子。
倫子が生まれついた時から夫はおらず、スナックを営み、厚化粧で香水ぷんぷん、おまけに地域の金満家の男とねんごろらしい。
今なおフェロモン溢れる母親像を想像させる。
そりゃ、嫌だよね、家出て行くよねと思う。
けれど、上京当初身を寄せていた祖母も他界し、BFにも逃げられ、無一文で寄る辺なき身となった今は実家でおかんと生活するしかない。
仕方なくおかんから借金し、スナックと実家のある敷地内に食堂をオープンさせ、ここで料理店主として生きる道を決心をする。
その店名が「食堂かたつむり」。
ランチとディナーで1組ずつしか予約を取らない。
決まったメニューはなく、予約客としっかり面談し、何を提供すれば良いのかを見極めて材料選びから慎重に進めるスローなスタイル。
儲けは少なそうだが、地域の信頼をゆっくりと集め始める。

さて、おかんとの確執は相変わらずだが、ある日おかんのスナックで催された宴会にだけはなんとか顔を出した倫子。
その席で酔客から、おかんについての意外な話を聞かされて、倫子の母親像はコペルニクス的展開をみせることになる。

映画化されており、柴咲コウさんが倫子でおかんが余貴美子さん。
観ていないけど、余貴美子さんのおかんは非常にイメージが沸く。
一方、柴咲コウさんは、私の倫子イメージじゃない。
私はずっと、この本をFBで紹介してたKumon先生をイメージしながら読んでいた。

番外編の「チョコムーン」と2本立てで、これは本編にも少しだけ登場する二人の旅行者のエピソード。
困難を抱えた人々の新たな出発が気負うことなくほっこり描かれている。

良書だと思う。
けれど私のような読書傾向を持つ者、すなわち小説から震撼や慟哭を味わったのち、人間性を否定させられるような暗く虚しく、人生に救いが無くなるような本を読みたがる読者には向かないとも思った。

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