作家・今野敏の小説手法に脱帽
☆今野敏「カットバック 警視庁FC2」(講談社文庫)表紙
カットバックはシリーズものらしく、これは2作目だった。
そうと知らずに思わず買ってしまったが、これは1作目を読まねばなるまい。
FCとは「フィルムコミッション」の略。
映画やドラマの撮影で、各種便宜、警護や安全確保のために警察が協力するチームとして設置されている。
多分これはフィクションの部署だろう。
映画産業の盛んなアメリカでは実際に存在し導入されているチームらしいが、日本には現段階では存在しないと思われる。
さて冒頭からいきなり嬉しくなった。
撮影現場の管轄は「隠蔽捜査」シリーズで主人公・竜崎が署長を務めていた大森署だったからだ。
しかも副署長・貝沼の登場でテンションが早くも上がってしまった。
映画撮影の現場で出演俳優の高平が他殺されたことから、FC室の協力のもと、警視庁の捜査一課が乗り込んで来たのだが、捜査員は今野敏の他の警察小説に登場するお馴染みの刑事だったようだ。
そちらの作品群は読んでいないので少しも分からず残念だったが、大森署からは戸高が駆り出されてまたもテンションが上がった。
竜崎は「隠蔽捜査7」で署長を退任、神奈川県警に移動したが、後任は美人の女性署長になっていた。
この人事、「隠蔽捜査」の続編で詳らかになるのだろうか、楽しみである。
映画のタイトルが「危険なバディー」なのだが、TVドラマ「あぶない刑事」を彷彿とさせるのが面白い。
本物の刑事と人気ドラマで刑事役を演じる二人の俳優との絡み、刑事数名が出演者の若手女優ファンでミーハーぶりをさらけ出したりと、ゆるゆるな光景も今野敏の作品には珍しい。
主人公はFCチームの一員「楠木(くすき)」という若い警察官だが、彼がいかにも「9時-5時」男でやる気はないが勘だけは妙に冴えてる傍観者的なキャラクターで、これも面白い。
解説の関口苑生さんの文章でいろいろ腑に落ちた。
今野敏の作品の多くが映像化されているが、彼の作品を読むと登場人物の映像化が掻き立てられるのだろうと私は思う。
何故か。
関口氏によると、今野作品において登場人物の視覚的な描写がほとんど無く、自由に読み手の頭の中で描くことができるからだと。
どんな風貌なのかではなく人物たちの性格描写が重要で、視覚的な縛りはないから、かえって想像が豊かになる、ということだ。
なるほどと思った。
すごいな今野敏、あっぱれ解説の関口苑生さん。
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